英俳優ベン・ウィショー(Ben Whishaw)さんに関するブログ

2014年11月19日

映画「Paddington」は「性的表現により小さい子の鑑賞に不適切」ではない。たぶん

忙しいひとのための概略:
 映画『パディントン』はPG指定だが、それは「性描写がある」「下品な言葉がたくさん出てくる」ためではない。
「性的表現」という文言は、製作者からの申し入れにより、すでに取り下げられている。
「下品な言葉」も軽度で不明瞭な発言が一度のみ。
 PG(ペアレンタルガイダンス)という指定は、「お子様に見せられないアダルトな作品」という意味ではまったくない。「誰でも見られるが、8歳くらいから下の幼い子どもや感じやすい子どもには保護者が配慮をすべき」というもの。
 近年の子ども向け作品で同じPG指定の作品には『アナと雪の女王』『トイ・ストーリー』などがある。

●日本の映倫では年齢制限なしの「G指定」に(※2016年1月追記)

 日本でも2016年1月15日に字幕・吹き替え版ともに無事公開された(映画『パディントン』公式サイト)
 日本の映画倫理委員会によるレイティングは「G」
 年齢制限はなく、保護者の指導・助言も特に必要ない「どなたでもご覧になれます」という指定になった。

●発端はタブロイド紙

 11/18付デイリー・メールに、英国では11/28から公開される映画「パディントン」が、英国の映像作品レイティング審査団体「BBFC」から「PG」の指定を受けたという報道があった。(当該記事これだったっけ……。ねたばれ注意)
 
 これを受けて「パディントンにセックス表現・汚い言葉・暴力表現!?」という感じの追随記事がタブロイド中心に出回った。

●映像審査団体BBFCによる指定の詳細

 レイティングの詳細はBBFCで見ることができる。この作品詳細ページに、確かに最初の記事のタイミングでは、"dangerous behaviour, mild threat, mild sex references, mild bad language"と記されていた。けれど、現在は更新され、"dangerous behaviour, mild threat, innuendo, infrequent mild bad language"と書き換えられている。
 


 BBFC公式アカウントのツイートでも最初に出ていた文言は確認可能。

●レイティングの文言が見直され、トーンダウンした

 BBCニュースの取材によると、金曜日にこの判断が出たあと、映画の製作者が、レイティングについて再考するように要望したらしい。それを受けてBBFCは警告の文章を見直すことになった。
 
 その結果、PGのレイティングはそのままだが、「穏やかな性的表現mild sex references」が「ほのめかしinnuendo」に変更され、sexの文字は消えた。「穏やかな罵り言葉mild bad language」は「まれにある穏やかな罵り言葉infrequently mild bad language」に変更されている。
 
 この「悪い言葉」の内容は、ふぁっく、しっと、なんかよりはさらにマイルドと思われる「ぶらっでぃ」を、不明瞭に、1回だけ使っているということらしい。「性的な……」については、場面のねたばれになりそうなので詳細は省く。ただこれは、笑いのための場面であって、もちろん「セックスの描写」ではない。

●製作者・出演者の見解

 上記BBCの記事で、監督のポール・キングは「PGになったことには驚いていない」と言っている。おそらく(以下ややねたばれ)パディントンが怖い悪役に追いまわされて、相当な程度の危険にさらされる場面があるというプロットと、子どもが真似したら危ないアクションがたくさん出てくるところが、製作時点で予想されていたひっかかる点なんじゃないかと思う。

(追記)ミスター・ブラウン役のヒュー・ボネヴィルもコメントしている。(動画リンク)レイティングは「完全に適切」「PGというのは『トイ・ストーリー』や『エルフ 〜サンタの国からやってきた〜』と同じ」「私の××は怖いかもしれないが、あまりセクシュアルではない」「年齢制限は8歳以下の子の鑑賞をさまたげるものではない。実際、5歳くらいの子たちと一緒に見たが、危険といったら笑いすぎてもらすんじゃないかということくらいだった」(ねたばれ)「クリスマスの児童向け演劇に出てくる女装キャラや『十二夜』と同じくらいに無害なもの」

●PG指定とはどんなもの?

 BBFCの「PG」(ペアレンタルガイダンス、保護者指導のもとに鑑賞)という指定の説明には、「誰もが見ることに適するが、一部のシーンは幼い子どもには適しない。8歳くらいかそれ以上の子どもなら不安になることはない。両親は幼い子や感じやすい子が動揺するかもしれないということを配慮すべき」とある。「何歳以下の子は見たらダメ」という規制ではない。最近の子供向け作品では『アナと雪の女王』や『ヒックとドラゴン2』がPGの指定を受けているとのこと。

●『テッド』のようになる?

 最初のタブロイド報道を受けて「『テッド』みたいになるのでは」という予想するひともいた。予想するのはもちろん自由なんだけど……。


 原作のパディントンはもともと「行き過ぎに感じられるほど礼儀正しい」のが特徴のキャラクター。CGで描かれる熊と実写の人間の演技で構成されているという点で、二つの「クマ映画」は見た目の印象は似たものになるかもしれないけれど、パディントンが「15歳以上指定」の『テッド』みたいな仕上がりになるとはちょっと考えられない。



 トレイラーから受ける印象は、「怖い悪者も出てくる、スリル満点のファミリー映画」の域を出ていない。リアルすぎるデザインに反感を覚えるひとがいるのはわかるし、「悪者」や「スリル」の追加増量が原作の世界観を壊していないかという危惧もわかる。でもわたしは、ベン・ウィショーの声も、原作のパディントンも、英語版公式アカウントのパディントンのおしゃべりも好きなので、ただでさえ見た目が賛否両論なところに、このうえ妙なイメージがひとり歩きをしたら……と心配だ。

「なんかテッドみたいな映画らしいよ」という評判に影響されて、原作とも映画とも似ても似つかない罵倒を繰り広げる日本独自のなりきり公式アカウントが登場……みたいな展開にだけはなりませんように。と、日本公開を担当する配給会社さまには、切にお願いもうしあげるしだいです。#hardstare
タグ:paddington
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2013年08月28日

ダニエル・クレイグのインタビュー(2013/8/23)からボンド次回作の展望など


 現在の「007」シリーズで主役のジェームズ・ボンドを演じているダニエル・クレイグは、ベン・ウィショーと何かと縁があって、「トレンチ」「Jの悲劇」「レイヤーケーキ」そして「007 スカイフォール」と共演作品がなんだか多い。007映画の次回作、仮称「BOND24」でもQとボンドとして再会予定

 そのダニエル・クレイグが8/23付で「VULTURE」のインタビューに答えている。夫人で女優のレイチェル・ワイズ、レイフ・スポールといっしょに、秋からブロードウェイでマイク・ニコルズ演出、ハロルド・ピンター作の舞台「Betrayal」に出る予定(リハーサル風景)。ピンターの作風について、結婚生活について、そして「スカイフォール」の舞台裏、BOND24についてなど。ボンド映画の動向は全世界的にとにかく関心が高いので、いろんなニュースサイトに拡散している。

 ウィショー君に直接は関係ないけど、いろいろ興味深いインタビューだったので気になったところをピックアップしてみた。まず同業者にしてパートナーとの関係について。冒頭、インタビュアーは、夫婦いっしょにインタビューできないかだめもとでレイチェル・ワイズに打診してみる。しかし「変じゃない?」「どうしてそんなことできるのかわからない!」と一蹴される。

 ダニエルも同様の態度。反応がとても正直なので「二人が人生をともにしているのは、どっちも嘘があまり上手ではない(という共通点がある)からでは」などと感じるインタビュアー。

 僕等は職業上は別々の存在で、別々の存在であり続けることに満足している。そして僕等はプロフェッショナルなカップルではない。そう見られたくはないんだ。なぜなら、僕等の関係はほかの誰でもない僕等だけの問題だから。いっしょに舞台に立ち、そこで自分たち自身をさらけだすことになるのを僕等はわかっているが、それは「プロフェッショナルとして」自らをさらすということだ。僕等は俳優としてそれをするんだ。
(Rachel Weisz and Daniel Craig on Getting Entangled in Betrayal By David Edelstein 8/23/13 / Vulture)


 インタビュー中、繰り返し「プロフェッショナル」ということばを使っていたのが印象的。「完璧主義」という評価をよく見る気がするけれど、なにより職業人でありたいひとなんだ。ここでいう「プロフェッショナルなカップル」はきっと、二人セットで存在することが職業であるカップル、姿を見られて私生活を切り売りするのもお仕事、みたいな感じかな。エドワード七世時代の「プロフェッショナル・ビューティー(社交界の美女)」のようだ。つまりは「職業:有名人」ということだけど、それより単体の本業を見て、っていうダニエル、真面目なひとだ。

 次に「スカイフォール」の話。ジュディ・デンチのMの話が中心にあって、重い雰囲気の脚本に、あとからユーモアを足していった。列車に飛び乗ってカフスを直す「アイコニックな」シーンは、ダニエルが飛行機で移動中に思いついたらしい。危機的で異常な状況下で立ち居振る舞いや見た目を気にするという面白さ。

 最後に、次のボンド映画の展望は。

 僕等は旧作のようなアイロニーをいくらか復活させたいと願っている。ただ、過去の模倣[パスティーシュ]にはならないようにする。お約束のギャグは僕にはできない、あまり上手くないから。あとからスッと意味が通るようなものなら別だが。わかるかな? もっと過剰な演技ができたらと思ってしまうこともあるが、ただそれはうまくできないというだけだ、だからやらない。
(Rachel Weisz and Daniel Craig on Getting Entangled in Betrayal By David Edelstein 8/23/13 / Vulture)


「カフスを直すアイコニックなシーン」のような、皮肉で真顔のユーモアを取り入れたい気持ちは(制作陣みんなに)あるが、派手なギャグは向いてないから無理だと思う。という結論。ウィショー君のQは「出番増量?」「現場に出る?」などとの噂もあるので、ボンドとQのお洒落な笑いを期待したい。
posted by rico at 18:06| Comment(0) | その他 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする