英俳優ベン・ウィショー(Ben Whishaw)さんに関するブログ

2013年11月16日

舞台「MOJO」走り書き感想(ねたばれ注意)

 11月上旬のプレビュー期間に、ロンドンで舞台「MOJO」を見てきた。「そのうちに」「もっと咀嚼してから」なんて言っていると書けないまま忘れてしまうので、鉄は熱いうちに走り書き感想文。ストーリーのねたばれはないつもりだけど、この先に見る予定で気になる方はご注意を。あと、ここはベン・ウィショーのファンブログなので彼の話に偏ってます。

 設定は1958年のソーホー、いかがわしげなクラブ「エズラズ・アトランティック」。オーナーのEZRA(名前だけで登場しない)が歌手のSILVER JOHNNY (Tom Rhys Harries)をスターに仕立て上げようとしている。そこへ近隣を牛耳るギャングのSAM ROSS(こちらも登場しない)が関心を示し、奥の部屋でエズラ、ロス、ジョニーが何かを相談しているらしいところから話が始まる。扉越しに様子を窺う従業員のPOTTS (Daniel Mays)とSWEETS (Rupert Grint)。ポッツはジョニーを発掘したのは自分だから見返りを主張したいらしい。スイーツは仲間に怪しい薬を供給する役。大声で歌いながら出たり入ったりするエズラの息子BABY (Ben Whishaw)。彼は下っ端従業員のSKINNY (Colin Morgan)に、ことあるごとに激しく突っかかっていく。表面的なきっかけは「カードでイカサマした」とか「こっちを見た」とか「服を真似した」といった些細なもの。一夜明け、エズラの部下MICKEY (Brendan Coyle)がやってきて「エズラの身体が2つのゴミバケツに入っている」と告げる。ジョニーの身柄はロスのもとにあるようだ。どうするどうなる。

※ちなみにポッツはシドニー、スキニーはルーク、スキン、ミッキーはマイケル、ベイビーはベイブ、ジョニーはジョン、キッド等と呼ばれることもある

 ベン・ウィショー演じるベイビーは急に歌ったり踊ったり、手が付けられないほど暴れたり、一見して予測不能で「サイコティックな」キャラ。けれど、2幕構成の後半に入ると、それだけではないことが明かされていく。具体的に何があったのか、どうしてああなのか、彼の望みはなんなのか、テキストから読み切れなかったところが、行間を埋める強烈な演技でかなり理解できた……と、思う。

 歌に関して。声量も歌唱力も十分で、耳に残る。ただ、どれもしっかり一曲歌い切るわけではなく、サビを1フレーズ、2フレーズくらい。彼の歌声をもっと聞いていたいけれど、お芝居の一部分としてはあのくらいで十分なんだろう。初回は急に歌い出されるとただただ度肝を抜かれるばかりで終わったけど、2回め以降はベイビーの言いたいことが歌詞や声や歌い方にこもっていると感じられたので、もっと理解したい、歌と演技の細部の記憶がまだ新しいうちに脚本を再読して反芻したい。

 第1幕の激しさ、声や動作の大きさ、周囲をねじ伏せるようなパワーは、何か新しい引き出しがガバッと開いたような感じがした。初日を見たファンがいっせいに「ウィショーが身体を作ってる!」「うっすら日焼けしてる!」と驚きをつぶやいていたのは、それは確かに、うん。でも、二の腕から臍あたりまで、見せなきゃいけないところを集中的にがんばったんだね、という印象でもある(笑)。バギーな「612プリーツのトラウザーズ」に包まれた部分はきっといつものウィショー君。さらに、前半は胸を張って仁王立ちするから上半身が際立つものの、後半は姿勢が変わる。遠目からもわかる身体のかたちの対比にベイビーの心理が表れているんだろう。

 第2幕はベン・ウィショーらしさが炸裂。一瞬にして両極に振れる感情表現、深淵を湛えたような瞳、伝わる痛み。その半面、せりふに埋め込まれた黒い笑いが居心地悪くて気持ちいい。何度か見たけど、同じせりふでも笑いが起きる回と起きない回があって、ああ舞台ってほんとうに生ものなんだ、と遅まきながら実感した。

 こうやって軽く感想を打っているだけでいろいろよみがえってきてまた見たくなる。いますぐロンドン帰りたい。これから体験できる方がうらやましい。どうかこの衝撃を楽しんできてください。

(以下、11/17追記。折畳みでほんとのねたばれ注意!)

 ベイビーののっぴきならない事情がはっきりほのめかされるのは(へんないい方だけど、そんな感じ)第2幕の冒頭あたり。しかしそれを観客に教えてくれるのは本人でもなく、ポッツとスイーツのいつものダベリのついでみたいな、ほんとにどうでもいい感じの明かされ方だったのがすごく引っ掛かって。なんなの、下っ端の2人まで訳知りって、店の中じゃ周知の事実ってこと。現在進行形だったの。だからどんなに暴れても迷惑かけてもまあまあしょうがないよねって流されてたの。腫れ物扱いだったの。ええー……(涙)。なんというか、まるでお酒か毒が時間差で指先まで届くみたいに、理解が行き渡るほどにじわじわと泣けてきてる。
posted by rico at 22:34| Comment(2) | 作品 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして
ウィショーさんのファンではないのですが、もし差支えなければ、MOJOのロンドン公演について教えてください。
日本でも上演されることになり予習のためにアマゾンで本を購入して読みました。
ロンドンでの公演は、普通に売られている本と全く同じ台本での上演でしたか?
教えていただければ嬉しいです。
Posted by たきざわ at 2017年06月01日 16:07
たきざわさんこんにちは、いらっしゃいませ。お返事遅くなってすみません。アマゾンなどで売られている台本を読んでから見に行ったのですが、上演された内容は本のとおりでした。歌や踊りが入る場面の指定もだいたいそのままだったと思います。気づかない程度の細かいカットや変更はあったかもしれないですが……。何かご不明なところがあればお気軽にお尋ねくださいね。
Posted by rico at 2017年06月10日 11:48
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