英俳優ベン・ウィショー(Ben Whishaw)さんに関するブログ

2016年12月17日

MS Society(多発性硬化症協会)クリスマスコンサート朗読



 2016年12月8日、ロンドンのセント・ポール大聖堂で行われた多発性硬化症(MS)協会のクリスマス・コンサートにて、ベン・ウィショーがレズリー・マンヴィル、アリス・シンクレア、ピーター・ワイトとともにアビ・モーガン脚本のクリスマス・ストーリーを読んだ。YoutubeやFacebookに全編アップされている。彼の番は18.30あたりから。

https://www.facebook.com/MSSociety/posts/10154796504473664

 facebookに写真も追加されている(12/19追記)






 参席された方のツイート。とてもうらやましい。補足情報は必読。

 何の話をしているのか、内容を要約してみた。逐語訳ではありません。聞き取りは不得手なので、まちがいがあったらぜひ教えてください。

『クリスマスイブ』(ベン・ウィショー)

 彼はデイヴィッド。「ノー、ノー、お願い、ドアを閉めないで!」と頼んでいる場面から始まる。タイミング悪く教会の外に取り残されてしまったらしい。

 デイヴィッドは、「シェリーのせいだ」といって、父親、母親、姪のニナと過ごす毎年の「うちのクリスマスイブの伝統」について語り始める。クリスマスイブには、シェリーとミンスパイ、ニンジンを暖炉のそばに置いておく。姪が寝たら、母親はデイヴィッド、シェリーを飲んで、と毎年いう。どうして、と聞くと「そうしないとニナが信じないでしょ」。[ミンスパイ、シェリー、ニンジンを置いておき、大人が夜中に手をつけておくことでサンタクロースとトナカイが来たと信じさせるイギリスの風習]

 母親は奇跡を信じる、信心深い善良な女性。姪は9歳で、サンタクロース[ファーザー・クリスマス]にiphone7をお願いしている(交換の必要が出たときのために領収書つきで)。父親は無口で、「ううむ」でコミュニケーションすることを好む。しかしデイヴィッドは、毎年のクリスマスイブの儀式、そして教会に行く意味を見いだせなくなっている。

「ほんとうに欲しいものをくれることができない何者かの存在を信じる必要があるのか?」――彼の手は、ドアを開けることができない。「たとえクリスマスの季節だろうと、1年のいつだろうと、この物言わぬ病、この目に見えない障碍、この贈り物(ギフト)――僕に与えられたこの贈り物は、時を問わず、毎日のように渡され続けている」[デイヴィッド自身が手のしびれを抱えた多発性硬化症の患者である。彼の場合は症状の進行を抑えることができないようだ]

 もし奇跡がほんとうにあるなら、誰かがもう治療法を見つけているはずじゃないのか? 自分はこの先10年以内に、教会に行くことも、歩くことさえできなくなっているだろう。

「もし、サンタクロースになんでも頼めるとしたら?」とニナが尋ねた。奇跡を、と彼は思った。奇跡を。

 ここでドアがようやく開く。ありがとう。

 ちょっとお酒が入って偏屈な気分になっている若い男性が、愛情と皮肉のこもった表現で、家族のことを誰にともなくつらつらと語る……うちに、彼のおかれた状況が明かされ、心を絞り出すような言葉が出てくる。いつのことなのか、誰の発言なのかちょっと分かりづらい部分もあったが、掴まれた。デイヴィッドのキャラクター設定の「20代後半〜30代前半のIT専門家」(Q?)、小さい姪がいる(本人?)というようなところは彼を「ミューズ」と公言するアビさんによる「あて書き」かなあという感じで、等身大にぴったりはまる。また何かの作品で組んでほしい。

 途中「トナカイは空なんか飛ばない」と言いながらふと宙を見るところがあり、一瞬の、何かにあこがれるようなまなざし[20.47]にPeter and Aliceを思い出してしまった。

『クリスマスの日』(レズリー・マンヴィル)

 MSの専門家ジェーン。料理が苦手だが、毎年クリスマスの日だけは、患者に手作りのお菓子を焼いている。彼らの病を彼女は救うことができない。けれど、自分の背後には治療法の研究と実験に励む「ヒーローたち」がいて、自分の問診も巨大なコミュニティの一部であり、一緒になって病の解決法を探しているのだと自分に言い聞かせている。その日の朝、家の芝生に立って緑地を見ていたら、鹿が飛び込んできて、しばし目が合うという出来事があった。希望を感じ、あらゆることが可能だと思った。ただ、信念[デイヴィッドのいう信仰と同じfaith]に飛び込むジャンプが必要なのだと。

『大晦日』(アリス・シンクレア)

「生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ」のセリフから始まる。学生のローズは『ハムレット』が大好きで、彼の気持ちがわかるという。怒り、混乱、誰かを責めたい気持ち。周囲の期待。ティーンエージャーなのにティーンエージャーらしいことができない。「なぜわたしが?」という思い。2年前に[MSの]診断を受け、症状は身体中に広がっている。しかし、いまは希望を持っている。まだ17歳で若く、生きているうちに治療法が見つかるかもしれないと言われた。可能性を信じる。周囲の愛が病を克服すると信じている。「新年おめでとう、ハムレット」。彼女が2017年に望むのは「生きること」。to be.

『新年最初の日』(ピーター・ワイト)

 スーパーの前で募金活動をしている70代の男性ジョン。新年早々か、という顔で避けていく人に、身の上を語る。家で待つ妻のために活動している。愛する彼女は58歳、26年前にMSと診断された。これまでの20年間で研究は大きな進歩を遂げたが、この先10年間にもまだ巨額の資金が必要だ。この病気は外からは識別できず、患者はどこにでもいる。職場、学校、あらゆる職業の人の中にも。
 彼女は歌を愛している。声は出なくなってしまったが、一緒に歌う。「まだ彼女の歌声が聞こえる」
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2016年05月19日

『ロンドン・スパイ』感想




 https://www.netflix.com/jp/title/80048568

 ストリーミングサービスNetFlixにて、日本語字幕・吹き替えがついて5月9日から配信されている。先日見終えた。
 
 個人的に関心のあることに引き寄せて考えてしまうけれど、これは「社会の構造として残り続ける、目に見えづらい差別・偏見」と「個人としての愛と感情」との対立の物語なのだな……と思った。「スパイストーリー」としては確かに残念ながら説得力に欠けるシナリオで、「奴ら」の正体や陰謀の意図など、謎解きの部分に力点を置いて見ると肩透かしを食うのかもしれない。ただ、ひょっとしたらそれは作り手にとっては書いてるうちにどうでもよくなってたのかもしれない。

 孤独のなかでお互いを見つけた二人に、ショッキングな死別、汚名、病、社会生活からの疎外、そしてまた親しい者の死、と理不尽な苦難がこれでもかというほどにふりかかる。同性愛者不遇の世代を生きてきたスコッティが経験した苦しみを、表面上はもはや差別なんか存在しないことになっている現代のロンドンに生きる若いダニーが無理やりなぞらされていくかのような展開。謎の中心をなすのはいまの世界が課す「顔のない差別と偏見」そのもの。個人が個人に対して抱くのとは違う「構造の敵意」に対抗しうる力は、愛だけ。誰がなんと思おうと僕らの愛は存在した、という「個人的な感情」だけ。

 ダニーに直接危害を加える「謎の組織の尖兵」が、だいたい仮面のように無表情な「女」ばかりのように見えるところがちょっと気になった。これはクリエイターよりプロデュースや演出サイドの意図なのかな。刑事、記者、ナース、女医、白衣の研究者。というか、逆に全体的にゲイ以外の男性は影が薄い? アレックスの「二人の父」は、威嚇的だがほとんど台詞がなく、ダニーの父に至っては喉にパイプが入っていてしゃべれない。無言の不機嫌でいられる特権を持った男が牛耳る世界で、女が派遣され無防備な青年を傷つける。そんな図式を見るようでつらい。息子に愛情を抱けないことを責められる母親たち、ロボットのように使われる「手先」たちの内心を思うとつらい。ただ、個人と個人が対話することで、わずかな転覆の可能性が生まれていく。起こったことは消せないし、作中でも言われているとおり負け戦だけれど。取調べをした刑事の最後のシーンは、あきらめと歯がゆさの奥行きのようなものが感じられてよかった。ハリー・ウォルターとシャーロット・ランプリングの演技も当然よかった。種明かしの過去話はちょっと駆け足すぎてあんまりだったけど。このあたりも背景を描き込んでくれていれば……。

 そういうわけで「世界の構造にまつわる象徴レベルの話」と、「スパイ陰謀ストーリー」と、「個人的な愛情の話」、わたしに見えた三つのレイヤーが、もう少しなめらかにかみ合っていれば傑作になったのかもしれないなと思った。一緒に見ていた家人はたとえば『ナイロビの蜂』ではそれがもっと高度に成功してる、と言っていた(世評でもル・カレ作品と比べられて一段落ちるという評価が多い気がする)。

 ウィショーさんの演技は素晴らしい。愛情深く勇気があり、繊細で力強く、セクシーで魅力的。たぶんあんまり素晴らしいので演出家たちはいつまでも彼を撮っていたくなるんだと思う。脇役は舞台のキャリアが厚い人たちが固めているようで、こちらもすみずみまで素晴らしい。映像も美しい。いつまでも見ていられるし、見ている間は脚本の凸凹も気にならないでたっぷりと楽しめる。3〜4話が一番好き。この作品が作られて良かったし見られてよかった。とはいえ、いまの彼が主役をつとめ、何もかものパーツが完璧にそろった、傑作の映像作品が作られないものかな、という気持ちもしてしまう。これはファンのわがままなんだろう。最後に見た舞台はそんな傑作に限りなく近いと個人的には感じたけれど、演劇は消えてしまうもので、映像作品なら繰り返し楽しめるから。
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2016年04月21日

2016年春のアワード祭りスケジュール(更新終了)

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 ブロードウェイで7月まで上演中の舞台『るつぼ/The Crucible』と、2015年〜2016年1月に英国と米国で放映されたドラマ『ロンドン・スパイ/London Spy』に主演し、各種アワードにノミネートがつづいている。選考対象になりそうな賞の数が多くて混乱してきたので、現時点のメモをまとめておく。見落としているものもたぶんあるし、まちがいもあるかもしれない。気がついたら随時足したり消したり日付の近い順に入れ替えたりして更新していく予定。ミスを発見したらコメントかメールでご指摘いただければ幸いです。更新終了7/15

 ノミネーション発表からストリーミングされる大規模なものもあれば、しれっとプレスリリース発表しておしまいのものまでいろいろある。アメリカの賞はEDT(NYなど東部夏時間)やPDT(LAなど太平洋夏時間)、イギリスの賞はBST(英国夏時間)で時差が発生してる。日本で追いかけるのもなかなか大変だ。
 
■演劇賞
●シアター・ワールド賞2015-2016
The Theatre World Award 2015-2016

「ブロードウェイまたはオフブロードウェイにセンセーショナルなデビューを果たした12人の俳優(男女各6名)」を選ぶ、1945年に始まったアメリカの演劇賞。
5/3発表: 受賞者12名にみごと選出! おめでとうございます。
(オフはデビュー済みだけど、そのときは取ってないから、いいんだよね……?)
5/23表彰式:サークル・イン・ザ・スクエア劇場にて、ソフィ・オコネドと一緒に受賞した。




●第82回ドラマ・リーグ賞
THE 82nd ANNUAL DRAMA LEAGUE AWARDS


http://dramaleague.org/events/awards/nominees
アメリカの演劇賞
パフォーマンス賞(NOMINEES FOR THE DISTINGUISHED PERFORMANCE AWARD)にノミネート!
リバイバル演劇作品賞と、パフォーマンス賞にソフィ・オコネドもノミネート。
イヴォ・ヴァン・ホーヴェが創設者記念優秀演出賞?的なもの(Founders Award for Excellence in Directing)を受ける。
5/20受賞者発表:受賞ならず。パフォーマンス賞は『ハミルトン』のリン=マニュエル・ミランダ、リバイバル演劇作品賞は『橋からの眺め』に。
おめでとうございます。

●第81回ニューヨーク・ドラマ・クリティクス・サークル賞2015-2016
The 81st The New York Drama Critics' Circle Awards 2015-2016

アメリカの演劇賞
http://www.dramacritics.org/dc_thisyears.html
5月5日に発表された。個別の賞の対象にはならなかったものの……。





5月17日の授賞式にて、演出家イヴォ・ヴァン・ホーヴェとデザイナーのヤン・フェルスヴェイフェルドがコラボレーションの仕事に対して特別賞(Special Citations)を贈られた。ソフィ・オコネドとベン・ウィショーが彼らの代わりに受けた。
http://www.theatermania.com/broadway/news/new-york-drama-critics-circle-awards-photos_77105.html

●第66回アウター・クリティクス・サークル賞
The 66th annual Outer Critics Circle Awards

http://outercritics.org/news/american-psycho-and-she-loves-me-lead-2016-occ-nominations/

アメリカの演劇賞
演劇部門主演男優賞(OUTSTANDING ACTOR IN A PLAY)にノミネート!
ほかにリバイバル演劇作品賞、助演男優賞にジム・ノートンもノミネートされていた。
5/9発表:受賞ならず。主演男優賞は‘The Father’のフランク・ランジェラに。おめでとうございます。
http://www.theatermania.com/broadway/news/2016-outer-critics-circle-award-winners_76995.html
5/26セレモニー
The annual Gala Awards Dinner and presentation of awards to the winners will be held on Thursday, May 26th (3PM) at Sardi’s Restaurant.

●第61回ドラマ・デスク賞
The 61th DRAMA DESK AWARDS

http://dramadeskawards.com/

アメリカの演劇賞
4/28ノミネーション発表:演劇主演男優賞はノミネートならず、残念。

6/5発表:演劇音楽賞でフィリップ・グラスが受賞。おめでとうございます。
ほかに演劇助演男優賞でビル・キャンプもノミネートされていた。

●第70回トニー賞
The 70th Annual TONY AWARDS

http://www.tonyawards.com/

アメリカの演劇賞
5/3ノミネーション発表:演劇主演男優賞はノミネートならず。
リバイバル演劇作品賞、演劇主演女優賞にソフィ・オコネド、演劇助演男優賞にビル・キャンプ、演劇照明デザイン賞にヤン・フェルスヴェイフェルド(『るつぼ』と『橋からの眺め』両方に対して)がノミネートされた。
6/12発表:残念ながら受賞なし。イヴォ・ヴァン・ホーヴェは『橋からの眺め』で演劇演出賞を受賞した。おつかれさまでした。

●2016ブロードウェイ・ドット・コム オーディエンス・チョイス賞
2016 Broadway.com Audience Choice Awards


お気に入り演劇リバイバル賞を受賞。
 名前のとおり、アメリカの演劇情報サイトのネット投票できまる賞。見ていなくても誰でも投票できたので、熱烈なファンのいる息の長い作品や、テレビや映画で有名な役者が出ている作品が多いみたい。専門家の選ぶ大きな賞とは(社会現象となっている『ハミルトン』をのぞき)だいぶ異なる顔ぶれ。ともあれ、おめでとうございます。


■テレビ賞

●第61回アイヴァー・ノヴェロ賞
The 61st Ivor Novello Awards



http://theivors.com/the-ivors-2016/

イギリス・アイルランドの音楽賞
5/19発表:London Spy作曲のキーファス・チャンシアとデイヴィッド・ホームズがベスト・テレビジョン・サウンドトラック賞を受賞!
おめでとうございます。

●2016年 英国アカデミー・テレビジョン・クラフト賞
British Academy Television Craft Awards



http://awards.bafta.org/award/2016/tvcraft

イギリスのテレビ賞技術部門
London Spyが4部門でノミネートされていた。
4/24発表:撮影・照明賞をLondon Spyのローリー・ローズ氏が受賞!
http://awards.bafta.org/award/2016/tvcraft/photography-and-lighting-fiction-entertainment
おめでとうございます。

●2016年 英国アカデミー・テレビジョン賞
House of Fraser British Academy Television Awards Nominees in 2016

http://awards.bafta.org/award/2016/television

イギリスのテレビ賞
主演男優賞(LEADING ACTOR)にノミネート!
ミニシリーズ作品賞にもノミネート。
5/8授賞者発表:受賞ならず。主演男優賞はマーク・ライランス。
ミニシリーズ賞は‘This is England '90’に。
おめでとうございます。
http://www.bafta.org/television/awards/house-of-fraser-british-academy-television-awards-winners-in-2016

●第68回エミー賞
The 68th Primetime Emmy Awards

http://www.emmys.com/awards/emmys

アメリカのテレビ賞
ノミネーション発表7/14:主演男優賞、作品賞ともにノミネートならず。
ざんねんでした。受賞者発表9/18
ちなみに……↓


↑こんな感じに、今の段階で『ロンドン・スパイ』とウィショーさんをプロモーションするような動きがあったので、制作サイド的には賞レースに送り込む気があるのかなと思ったんだけど……ミニシリーズ系英国ドラマ枠では『シャーロック』『ルーサー』『ナイト・マネジャー』などに競り負けた形。まあ、仕方ないですね。
posted by rico at 00:26| Comment(0) | ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする